設計者の死角

igoten

2013年12月26日 08:58



私の周りでは本当によく物が壊れる。
なぜなんだろうか。

先日も会社で、このストーブが壊れたので新しいのを買いたい
と言って来た。

会社の同僚: 「このストーブ火が大きくならないで、自動的に消えてしまうんで、
         新しいのを買いたいと思ううんですが」

私: 「修理に出したらいいんじゃないの」

会社の同僚: 「もうかなり古いんで部品が無いと思いますが」

私: 「そんなの聞いて見なきゃわからんでしょう」

しばらくして...

会社の同僚: 「メーカーに聞いてみましたが、やっぱりもう部品が無いので
         修理が出来ないそうです。
         たぶんバーナーが駄目になってるとサービスマンは言っていますが。
         やっぱり買いましょうよ新しいストーブ」

私: 「サービスマンの言うことなんてみんな嘘だよ、
   ストーブなんて全部修理できるんだから、
    ドライバーと紙やすり用意しといてよ」

それから私は、同僚の見ている前で、ストーブからバーナーの部分を外し、エヤーで
吹いてゴミを綺麗にして、再びストーブに取り付けて、点火してみた。
しかし結果は前と同じで、ストーブの炎は大きくならず、2~3分すると
消えてしまった。

会社の同僚: 「やっぱりだめですよ古いから、新しいのを買いましょうよ」

私: 「どこが壊れているのかわからないのに、修理が出来ないなんて言えないんじゃないの」

そして私はそのストーブをバラバラに分解し始めた。
私はかなり意地になっている。

しかしなかなか故障の原因はわからない、もうお手上げかなと思ったが、それでも
と思い、石油タンクから石油を吸い上げている、ポンプの部分を本体から
外してみて驚いた。
何と、ポンプの先の石油を吸い上げるパイプの先にビッシリ繊維状のゴミが
詰まっていて、石油が吸い上がらないではないか。

私: 「わかった、これだ、こんなにゴミが詰まっている。
   これを取れば正常に戻る」

自信満々で、バラバラにしたストーブを組み立てて、点火してみた。
すると驚いたことに、今度は物凄い勢いで、炎が立った。
私はあわててストーブを消した。

会社の同僚: 「あぶないですね、壊れちゃったですね、古いから」

私は大いに面目を失って、

私: 「仕方ない、新しいのを買おうか」と言った。

しかしその後どうしても納得がいかない私は、再びストーブを分解、
そして、ストーブのコントロールプリント基板上に、炎の大きさを
調整する2つのボリュームを発見した。

そして故障の原因が判明した。
長年使用している間に、石油に混じっていたゴミが石油を吸い上げる
バーナーに送るポンプの先のホースの金網に貼りついて、石油が
吸い上がりにくくなってしまったので、サービスマンがポンプの
強さを調整するボリュームを最大限に上げて、何とかしのいで
いたのだが、最終的にポンプの出力を最大限に上げても、
石油を送れないほどゴミが詰まってしまったのだ。

結局私はストーブの炎を見ながら、ポンプの出力を再調整し、
このストーブは新品に戻った。

世の中で捨てられるストーブの95%は修理可能と私は確信している。
修理不能の5%はバーナーのところに付いている、ヒーターが断線した物で、
これはバーナー自体を交換しなければ治らない。

ストーブのバーナーは常に高温に熱せられ、長持ちはしないと普通の
人は思うのだけれど、ストーブの設計者は、そんなことは百も承知で、
その部分だけはしっかりと作るのだ。

しかし、直径2cmも有るホースが、石油の中に含まれるゴミで詰まるなんて
事はたぶん想定外だったのだろう。




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