水瓶
物置を整理していたら、大きな瓶(かめ)が出てきた。
とりあえずその甕を物置から引っ張り出し、庭に置いた。
90歳近い母がその瓶を見て、「水瓶だ、懐かし!」と言った。
漬物用としてはやけに大きな瓶だと思っていたが、水瓶だったのだ。
昔はどこの家にも水瓶が有って、井戸から汲んだ水を入れておいたのだ。
時代劇なんかにはよく出てくる。
叔父の助太刀を頼まれた堀部安兵衛が、酒の酔いを醒ますために、
水瓶から柄杓(ひしゃく)で水をぐいぐいと飲むシーンは有名ですよね。
水瓶は水を入れる為に作られたものだ。
しかし、この水瓶は何十年もの間一滴の水も入れてもらえずに、
物置の隅に忘れられていた。
「水を入れないならせめて、一息に壊してほしい」と瓶が訴えている。
私は梓川の川辺から少しばかりの砂を採ってきて、瓶の底に敷いた。
それと白い小石を砂の上に置き、川の水を汲んできて、瓶の深さの
8分目位まで入れ布袋(ほてい)草を浮かべた。
それだけしておいて、その中に、今年生まれた1cm位の
子メダカをなんびきか放した。
放たれた子メダカはまるで喜んでいるかのように、
ものすごい速さで泳いでいる。
布袋草が浮いた、メダカの水瓶は我が家の玄関に鎮座している。
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