最近は機械の注文を受けるときに、「小さくしてくれ」と言う
要望が特に多い。
もちろん「性能は落とさずに」である。
更に、「小さくなるんだから安くなるんでしょうね」と言われる。
ここまで来るとさすがに温和な日本の技術者もブチ切れる。
でも、ドイツの技術者は切れない。
もともとドイツの技術者は客の注文なんか聞かない。
自分の教わった通りに設計するだけである。
しかしこの「up!」に関してはさすがのドイツの技術者も
切れたのではないかと疑う。
よくぞここまでコンパクトに車を仕上げたものだと思うからだ。
「トレードオフ」と言う言葉が有る。
Wikipediaによると「一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを
得ないという状態・関係のことである」となっている。
つまり、小さくする、燃費を良くする、コストを下げるという3つの
指令に対して、通常ならこのクラスの車が持っている何かを
思い切って切り捨てることである。
トレードオフによりこの車の仕様から外されたものをざっとあげてみる。
1、リアウィンドウの開閉上下機構。
2、デュアルクラッチDSG
3、電動可倒式ミラー
4、カーナビのスペース
1、リアウィンドウの上下開閉機構が無いことには驚かされる。
リアウインドウが全く開かないわけではなく、ガラスの前の方に
ヒンジが付いていて、後ろが10cm程開く。
これはコストダウンの為だけではない。
もともとコンパクトカーにとってリアウインドウの上下開閉機構は
頭痛の種なのだ。
大きなウインドウにして下げようとすると、タイヤハウスにぶつかってしまう。
仕方なくピラーで2つに区切り、前だけ開くようにするのだが、
デザイン的にも良くない。
そこで思い切って上下開閉機構は止めてしまったのだ。
これぞトレードオフの真骨頂。
昔乗っていたVWの車は4つのパワーウインドウが全て脱落した。
原因はウインドウを上下しているプラッスチックのギアの歯が飛んで
しまうもので、歯が一つくらい飛んでもギイギイ言って動いているのだが、
そのうちにどんどん歯が少なくなって、そのまま使い続けると、
モーターが焼き付く。
完全にギアの耐久性の問題なのだが、ドイツは日本と違って夏でも
カンカン照りで車のボディーが熱くて触れなくなることは無い。
プラスチックの熱による劣化ではないかと私は疑っていた。
「パワーウインドウが2つしかないということは、故障の確立も
半分になりますね。」と私はディーラーの人に言ったが、大した
事でもない事はアグレッシブに考えることだ。
2、DSGであるが、この車の一つ上位機種のPoloには「デュアルクラッチDSG」
と言うのが付いていて、この方がクラッチの接続時のショックが
少ないのである。
しかし「デュアルクラッチDSG」は重くて複雑で、高価である。
up!に「デュアルクラッチDSG」を付けると、面白味のない車に
なってしまう。
良くも悪くもこの「シングルクラッチDSG」がup!の売り物であり、
これだけとってみても、私はPoloなんてほしくないのだ。
3、トヨタアクアはエンジンを切ると自動的にミラーをたたむ。
何で?と私は思ってしまう。
ミラーが当たるか当たらないかを車が通れるか通れないかの目安に
したいと私は思うのだが。(ちょっと乱暴ですが)
up!は手で倒すのだが、結構重い。
すなわち倒れないと大差が無いのである。
前に乗っていたVWの車は、運転席側のミラーを電柱にぶつけた。
そしてミラーのカバーにヒビが入っただけではなく、ミラー全体を
構成している、アルミダイカストのフレームがバラバラになった。
修理しようとしたら、全とっかえで10万円と言われた。
そのままでは車検が通らないので、プラスチックの部分は裏から
ステンレスの板を張り付け、バラバラになったダイカストを拾い集めて
エポキシ接着剤で固めて修理した。
up!はミラーの中に全く電装が無いから、たとえぶつけて壊れても、
修理代金はそんなに膨れない。
物事はアグレッシブに。
4、up!はコンパクトの為にカーナビのスペースを作らなかった。
正確に言うと、カーナビはダッシュボードのエアコンの吹き出し
口の前に、取付版を接着して取り付ける。
日本向けとはいえ、VWの標準カーナビは止めた方が良いと私は思うのだが。
どのように付けるかはアイデアが有るので、後で書くかも知れない。
と言うことで、up!の4つのトレードオフを書いたが、要するに
どーってことない装備と機能を削って有るのだ。
負け惜しみかも知れないが。
続く...