鳩の平和
我が家の中庭で冬の間せっせと鳩たちに餌をやっていたのを、
6月を境に一切やめてしまった。
急に鳩が嫌いになった訳ではない。
餌を食べにくる鳩が増えすぎたのである。
元来このキジバトというのは山に住む鳩であり、
ドバトとは違い群れになって行動することが
あまり得意とは言えないようだ。
その為に我が家の狭い中庭に置かれた餌を、
自分の縄張りに置かれた餌と主張する
鳩がたくさん現れたのだ。
そして、平和の使者として、たばこのデザインにもなったこの鳩たちは、
わずかばかりの餌の所有をめぐって、
醜い闘争にいそしむようになってしまった。
つまり、何のことはない、良かれと思って私がしたことが、
とんだ禍の種になって、これ以上ほっておくと、我が家は鳩の楽園とは程遠い
鳩たちの闘争の場となってしまうと思われたのだ。
それに加えて、我が家で育ったキジバトのチーヤンは、
巣だって2年目くらいまでは、「チーヤン」と呼ぶと、
頭をぶるぶるふるわせる癖で他の鳩との違いを主張していたのだが
3年目になると、その動作がだんだん小さくなり、
ついには頭を振らなくなってしまった。
そうなると、情けない話だが、もうどの鳩がチーヤンなのかわからない。
えさやりを止めたら、日に日にハトの数が減って、今では時たま暇な鳩が
中庭を訪れるだけとなった。
自然のものが自然に帰ったのである。
ローマのものはローマに、カエサルのものはカエサルに帰るのである。
そして「パックス・ロマーナ」ならぬ「鳩の平和」がおとずれたのである。
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