アブサン物語

igoten

2009年07月24日 07:28



これは小説家村松友視が21年間飼っていた愛猫
アブサンに関するエッセイである。

正直なところ愛猫家がこの本を読んだら、たぶん
少し物足りなく思うかもしれない。
「うちのネコの方がもっと可愛いし、これ以上
面白い逸話はたくさんあるのに。」こう思う
はずである、私もそうであるから。

まあそう思っただけでこの本を読んだ価値があるのかも
知れない。
しかし私はこうも思う、本当に面白いのはネコがいろいろ
することを見るのではなく、いい年をした大人が、
ネコにふり回されて、いちいちあたふたすることである。
なぜなら私もそうであるから。

この本の一節を紹介しよう。
ここには生まれてこの方ネコを飼ったことがない
作者の奥さんが登場する。

このときカミサんが”疲れ切った顔で座り込んでいた”
理由など、私に想像も出来ないことだった。
「どうしたらいいのか分からなくて。。。」
カミサンは、私の顔を見ると救われたようにな表情に
なった。
「何がわからないの」
「この仔ネコが怒っているわけが。。。」
「怒っている?」
「そう、ゴロゴロ喉をならして怒っているんだけど、
なぜ怒っているのかが分からなくて」

ネコを飼ったことがない人はこんなもんかな。
何しろこの本ネコに関しては有名な本らしいので、
ネコ好きの人は一度読む義務があるのだ。

そして読んだ後に「やっぱりうちのネコの方が可愛いな」
と思った人は間違いなく、ネコ馬鹿である。

それと本の最後の小池真理子の『解説』が実に
いい、これを読むだけでもこの本を買う価値が
有るかも。

夫がノミだらけの三毛の子猫を連れてマンションの
エレベーターから降りてきた。
ついて来ちゃったんだ、一晩、泊めてやろうよ、
と言われ、内心、「汚いなあ」と思いつつも
しぶしぶ承知した私は、夜が明けた頃、すでに
その子猫に猛烈な恋をしていた。
こんなはずじゃない、と思いながら、スリスリと
足に身体ををなすりつけてくる猫の柔らかさ、
温かさは私と言う人間が頑なに抱き続けていた
価値観を大逆転させた。それはあたかも、恋の
魔法にかけられたような一瞬であった。
    小池真理子 解説 より

関連記事