迷宮
記憶喪失で入院している私の元に「治療師」と名乗る
男が現れ、実験治療と言う名目で、猟奇殺人に関する
様々な資料を読むことを求められる。
これらの資料を読みするめるうちに私はこの猟奇殺人の
加害者であるという確信が生まれる。
そして私の頭の中に、この治療師に対する疑惑が浮かぶ。
いったい何の為にこの治療師は猟奇殺人の犯人たる私に
色々な資料を読ませるのか。
そしてそこに精神病と記憶喪失を患う私対治療師の静かなる
戦いが始まる。
治療師とは何者なのか???
治療師の目的は???
そして私は本当に記憶喪失なのか???
読者は何がミステリーで何が解き明かされようとしているのか
わからない不安の中を、まるで暗い迷宮の中を手探りで歩くような
感覚に陥る。
芥川龍之介作の『藪の中』を読んだことがある人は、もしかしたら
この小説が藪の中に突入するかも知れないという不安にもおびえる。
「羊たちの沈黙」を観た人は、精神病院に収監されている、
アンソニー・ポプキンス演じるハンニバル・レクターがジョディ・フォスター演じる
クラリス・スターリングを言葉で追いつめていくシーンを連想するかも知れない。
物語の結末はどうなるのか。
ネタバレですよ!!!
実はこの治療師は医者では無く、スランプにおちいり、自分も
少し精神状態が怪しい作家で有り、この記憶喪失の猟奇殺人者の私に
自分の書いたストーリを刷り込もうとしていたのだ。
それに気づいた私は最終章で逆に治療師を追いつめる。
そして最後に治療師の反撃が。
私は、言葉を失ってしばらく沈黙してしまった。
しかし、十秒ほどたって、とうとうたまらず声をたてて、くっく、と
笑ってしまった。
(この小説の最後の文章)
作者が仕掛ける2重3重の罠に落ちないで、読者は最後まで
行きつけるのか。
秋の夜長に読む一級のミステリーですよ。
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