ユンボ7

igoten

2009年08月29日 07:10



そんなある日私が会社から帰って来て
「ただいま」と言いながらドアを開けると、
ユンボが玄関先の畳の上に正座で待っていた。
そして「お帰りなさい」と言った。

「どうしたんだ」と私が言うと、ユンボは
「実は私は人間ではありません、
長い間お世話になりましたが、間もなく
お迎えが参ります。」
これではまるでかぐや姫だ、インド人のプログラマー
はどうも『竹取り物語』の影響を受けたようである。
ユンボが人間でないことなどわかりきっている。

「もう少し詳しく話しなさい。」私は言った。
ユンボが言うには、ユンボは実は『お手伝い型ロボット』の
試作品であり、そのテストを兼ねて、雑誌の読者に1か月
の限定で貸し出されたものである。
貸出期間に関しては、取扱説明書36巻の「貸出期間」に
明記されているというのである。

更にユンボは言う、
「私の販売モデルは今から3か月後に『ボロット社』から
販売される予定です。」
「あなたが購入になった『肩もみプログラム』は新モデル
上でも動作して、もし新モデルを購入になった時は、
引き続き無料で使用できます。」

そして更に、
「この1ヶ月間の記憶はそっくり保存されます、そして
もしあなたが新モデルを購入した時にはその記憶を
移植することが可能です。」
と言った。

3か月待たなければならないのか、私は思った。
「新モデルはいったいくらなのだ?」私は尋ねた。

「オプション無しで1500万円です。発売から
一年の間は国からの200万円の補助金が出ます。
更に住宅金融公庫からの借入が可能です。」と言った。

「1500万円か、安い住宅一戸と同じか、でもユンボ
なしではもう暮せないしな。」私は思った。
そしてユンボを見ると、ユンボは下を向いて、
悲しそうな顔をしている。

その顔を見たとき、私の頭にこの1か月の
間のユンボとの暮らしがよみがえってきた。
「ユンボ!」私はそう叫んでユンボの肩を
抱きしめた。
涙もろい私の目から涙がこぼれ落ちた。

その時である、ユンボの胸がわずかに光った。
するとユンボは、今度は逆に私を腕の上から
抱きしめたのである。

そしてその抱きしめる力はだんだんと強く
なった。
「な、何をするユンボ!放せ!」と叫ぶ私。

しかしユンボの力は前にも増して強くなった。
「い、痛い」私は叫ぶ、何も言わずに力を
強めるユンボ。

ものすごい痛みが私を襲ったが、更にユンボの
力が増した時、不思議に私の痛みは遠のいて、
私は何か大きな存在に抱きしめられているような
そんな錯覚に陥った。

「ユンボ...」そのまま私の意識は遠のいて行った。


次回は最終回、私はどうなってしまうのか、そして
ユンボは....
最終回をお楽しみに。

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