ネコたちのレクイエム3



次の日は休日であった、私が居間で朝食を取りながら、
部屋を一つ隔てて風呂の出窓の辺りを見ていると、
驚いた事に親猫が子猫を口に咥えて、
出窓の屋根からボイラーの上に飛び降りる所であった。

「ああー!」と言って私が見ていると、
親猫は子猫を咥えたまま裏庭の方に消えていった。
しばらく驚いて呆然としている私の前に再び親猫が現れ、
出窓の屋根の中に消えた、もちろん親猫は
私が見ている事など知らない。

しばらくするとその親猫は再び子猫を咥えて出窓の屋根から
出てきた、そして前と同じ様に、
裏庭の方に消えていった。
その後私は再び親猫が現れる事を期待して同場所を見ていたが、
親猫は現れ無かった。
どうも猫たちの引越しは完了したものと思われた。

その後しばらくは猫は現れ無かったと母は言う、
しかし何日か経ったある日再び猫たちは一番初めの
小屋の隅に戻ってきたのである。
しかもその子猫たちに母は餌をやり始めたのである。
いたずらをされるより餌をやってしまった方が良いと言うのが
母の理論であり、母は無類の猫好きである。

始めは警戒していた子猫たちも、母が置くおいしい餌の誘惑には
勝てないと見えて、餌の周りに人が居ないと
小屋の隅から出てきて餌を食べた。
子猫は全部で3匹居た、三毛とトラと白黒の子猫であった。
この子猫たちの親はペルシャ猫で痩せてはいるがかなり
立派な猫であ有った。

こんなかわいい猫なら必ず貰い手が付くはずで有るが、
野良猫であることを思えば、やはりこの猫も
野良猫として生まれたものであろう。
この親猫は相当に警戒心が強く、ちょっとでも人の気配がすると、
何処かに隠れてしまった。

この親に仕込まれたのか子猫たちも揃って警戒心が強く、
人が近づくとたちまち気配を感じて、
小屋の隅に逃げ込んでしまう。
そんな日が何日か過ぎて、子猫たちも随分と大きくなってきた。

  

2009年10月03日 Posted by igoten at 07:28Comments(0)ネコたちのレクイエム

ネコたちのレクイエム2



次の日の夕飯の時母が「猫はどこかに引っ越したらしい。」
と言った。

どうも私が竹の棒で突っついたりした事が気に入らなかったらしく、
親猫が子猫を連れて引っ越したのである。
これでひとまず安心かなと私は思った。

それから数日して私が会社から帰って風呂に入っていると
、風呂の出窓の上の方で何やらごそごそ音がする。
鼠かなと思ったが、鼠にしては音が重い。
何だろうと思っているうちに「猫だ!」と、はたと思いついた。

私はあわてて風呂から出ると、懐中電灯を片手に梯子を立てて
それに乗って風呂の出窓の上を覗いてみた。
風呂の出窓の上は箪笥の引き出しを2つ縦に並べた様に
なっていて、片方に猫が入れる位の穴が開いていた。
良くこんな所を見つけてものである。早速懐中電灯で照らして
その中を覗いてみた。

あいにく懐中電灯の電池が無くなりかけており、全体を明るく
照らし出さない。
しばらくしてほの暗い光に目が慣れると穴の中が薄ぼんやりと
見えてきた、しかし猫らしきものは見えない。
「おかしいな」と思いながらそれでも今にも消えそうな懐中電灯で
更に穴の中を照らすと、一番奥の下の方に、小さく光る目が
幾つか在って、こちらを看ているではないか。
「あ!居た。」と叫んで私は懐中電灯を手の平でとんとん叩きながら
穴の中を照らした。
こうすると一時的に懐中電灯は明るくなる。

懐中電灯で照らされた光る目は確かにこちらを視ているのだが、
どうした訳かどの目も微動だにしない。
試しに出窓の屋根を子猫が居ると思われる辺りをトントンと下から
突付いてみたが、やはり目は動かなかった。
その日は遅かったのでそれ以上は何もしなかった。
  

2009年09月28日 Posted by igoten at 07:28Comments(2)ネコたちのレクイエム

ネコたちのレクイエム1



眼を閉じて思いかえすと子供の頃からいつも
ネコが傍にいた。

中学生のころだろうか、雨の降る冷たい夜、
びしょ濡れになったネコが寝ていた私の蒲団の
中に突然入ってきて、ごろごろ言いながら
私のお腹のあたりで丸くなっている、
その冷たくて暖かい感覚を今でも思い出す。

昔はどの家にもストーブなど無かった。
せまい掘り炬燵に家族5人が集まりひしめくように
夕食をとっている、そんな中でもネコはネコで
ちゃんと自分の居場所があり、時々炬燵の中から
這い出してきて、自分の分け前を要求する。

家族全員が外出して夜帰って来て玄関の戸を
開けようとすると、どこからかネコがやってきて、
母の足にまとわりついて鳴いている。
そんな時は母は先ずネコにたっぷりの夕食を
やってから家族の食事の用意にとりかかった。

いったい何匹の猫が私の前を通り過ぎたのだろう。
黄昏の中に消えていったネコたち、これはその
ネコたちのレクイエム(鎮魂歌)である。


ネコたちのレクイエム
夕飯の時母が「野良猫が物置の隅で子供を産んだ様なの。」
と言った。
当時母は74歳位であった。
私は黙って聞いていたが内心弱ったことになったと思った。
我が家の近くでは最近野良猫が急に増えて、
家の中の食べ物を取られるなどのの被害が出ていた。

次の土曜日私は母が言っていた物置小屋の隅を覗いてみた。
我が家の東側にある物置小屋と隣の家の境に30cm位の
空間が有り、長い洞穴の様になっており、猫はその中に
居ると言う。
しばらく私は子猫が居ると言う、その隅の暗がりを
覗いていたが何もみえなかった。

そして「何も居ないじゃないの」と言ってその場を離れた。
事実小屋の隅は薄暗くてはっきりとは見えないのだが、
生き物など何も居ないように思われた。
しかしである、私が小屋から少し離れて小屋の隅を
見るともなしに見ると、小さな子猫らしいものが2~3匹
ちょろちょろと穴の中から出たり入ったりしているではないか。

「あれー!」と私は言って、再び小屋に戻ってその
隅の中を覗いてみた。
しかしいくら目を凝らして見ても猫らしいものは
全く見えなかった。
「おかしいな」と言って、私は近くに有った竹の棒で
小屋の隅の真ん中辺りを突っついて見たけれど
子猫らしいものは出てこなかった。

続く。。。
(「ネコたちのレクイエム」は私のホームページに書き込んだ
ものを少し書き直してUPしています。)
  

2009年09月17日 Posted by igoten at 07:05Comments(0)ネコたちのレクイエム