敗北

先ほどからそいつは光る眼でこちらを狙っている。
たとえ奴が隠れていても、私にはその気配でわかるのだ。

彼らは我々とは完全に別の生物だ。
そしてこの果てしない戦いは既に5年以上もも続いている、完全な消耗戦だ。

平和なこの場所に彼がやって来た時から戦いは始まった。
これまで我々はいったいどの位の犠牲を費やしたことか。

彼らは本当に素早い、そして並はずれた飛翔力で狙い澄ましたように 獲物に飛びかかるのだ。
ほんの一瞬の気の緩みが完全な敗北に繋がるのだ。

そして今、じりじりと彼が近寄ってくる気配を感じる。

もう彼はすぐ近くにいる、彼の吐く息が私にかかるほどに。

危険だ、しかしどうしたことか私の意識が薄れてゆく、だんだんに....
遠のいていく意識の中で私はかすかに妻の悲鳴を聞いた。

「キャー! あなた、タマがまたあなたおかずの魚をとったわよ。
酔っ払って居眠りなんかしないで、しっかり見張っていなきゃ 駄目じゃないの」


すみませんね、騙すつもりなんかほんのちょっとも無かったんですがface03 結果的にはこんなのになってしまいました。

猫から見た人間てどんなんだろうね。
ところで先日書いた『化嫌い』と言うショートショートは
http://kotanero.naganoblog.jp/e359069.html
空から降りてくるのが人間で、住んでいるのは別の生物 という設定なんですが、わかりにくかったかなァ。
  

2009年12月21日 Posted by igoten at 07:16Comments(4)SF

イータ!


「ねえマイクちょっと私の部屋に来てくれない」
妻のキャサリンは研究室の半分開いた扉から顔を出してそう言うと、再び 扉を閉めて行ってしまった。

私はちょうど来月に学会誌に発表する予定の遺伝子に関する 少し複雑な計算をしている途中であった。
いつもなら「ちょっと待ってくれ」というところだが、キャサリンの声が 普段と違って少し興奮しているように思えたので、やりかけの計算式を そのままにして立ち上がった。

キャサリンの研究室は私の研究室の斜(はす)向かいにあって、 間取りはほとんど私の部屋と同じであった。
私は扉を軽くノックをしたが、彼女の返事を待たずにそれを開けて中に入った。

彼女はすでにパソコンの前に座りモニターの画面を食い入るように見ている。

「マイクこの数式を見て頂戴」
私が近付くとキャサリンはそう言ってモニターの載せてあるデスクから少し身をひいて、 近くにあったもう一つのイスを引き寄せると、自分の椅子の横に並べて、 私に座るように言った。
彼女の声にはどこか興奮を無理やり抑え込んだような不自然さがあった。

出された椅子に腰をかけると、私はモニターに映し出された複雑な数式を見た。
それは明らかに遺伝子がある状態から異なる状態に変化することを表した数式であった。

私はしばらく画面に描かれた数式を眼で追っていたが、 その数式の中に書かれているある記号の役割がどうしても理解できなかった。
「このη(イータ)っていったい何だい?」
私はキャサリンに訊ねた。

ηは外力なの」キャサリンは答えた。
その声には何かとてつもない重大な発表をするような響きがあった。
「外力か、しかしこれは...」私は言い淀んだ。

「マイク、私は何度も確かめたのよ、何度も。 しかもこの数式はあなたが何年もかけて集めてくれたデーターから導き出したものよ 貴方の教えてくれた方法で」

私はひどく混乱していた、そして言おうか言うまいか少し考えていたが、 やがて吐き出すように言った。
「そうすると君はこの地球上の全の生物が何らかの見えない 数式に従って発展して来たと言うのかい」

「そうなるわねマイク、私もはじめは信じられなかったわ、でもよく調べてみると 生物の進化の過程で、どうしても理解のできない遺伝子の変化が起きているの。 それは生物の長い進化の過程の重要な分岐点で必ず現れるているわ。 私も色々な可能性を考えたの、でもなぜそうなるのか皆目見当がつかなかったの」
キャサリンはそこで一息入れると続けた。

「そしてそれらのことは、ある外力を想定して式を立てると、すべて合理的に 説明が付くことに気がついたの」
キャサリンの声は明らかに興奮していた。

「これがその数式なのか、そのことに関しては僕も少しは感じていたさ、 人間の進化が単にランダムに発展したのではないのではないかと.... そうすると君はこのηが神だって言うのかい」
私はまるで自分自身に質問するかのように訊ねた。

「わからないわマイク、でも私はそうじゃないと思うの、もしηが神だとしたら、 故意に戦争を起こしたりして罪もない人々を数えきれない程殺すかしら」

「じゃあこのηはいったい何なんだい」

「それはさっき言ったように私にもわからないの、でも何かとてつもない大きな力がこの世の中の全ての 事象をプログラムして、動かしているのよ。 たぶんこれからの私の仕事はこのηを探すことになるのでしょうね。 そのうちきっと答えを見つけるわ」

私はキャサリンの顔とモニターの画面を交互に見ながら考えていた。
もしキャサリンの言うようにηが存在してそれが何か判明したとしたら、 人類はいったいどうなってしまうのか。
しかも既にそれすらプログラムされているというのか。

「マイク、今日はもう仕事は止めて早めに家に帰らないこと、もしかしたら 私たちの研究も根本から見直す必要があるかもしれないわ」

私の取りとめのない思考は、キャサリンの声で中断された。

しばらくして私とキャサリンは何重ものセキュリティチェックを経て、 中央総合遺伝子研究所の通用門を出ると、郊外の自宅に向かって車を走らせた。

途中我々はテイクアウト専門の中華料理屋で夕飯を仕込んだ。
「マイク、ジョンんはもう学校から帰ってきているかしら、最近なんだか 勉強に身が入っていないように見えるんだけど」
助手席に座ったキャサリンはテイクアウトの中華料理の紙のバッグを 少し傾けながら言った。

「そうだな僕の方からすこし注意をしておくよ」
先ほどのことが気になって殆ど上の空で私はそう応えた。

自宅の玄関のドアを開けて家の中に入ると居間の方から明かりがもれてる。
私とキャサリンが居間に入って行くと、息子のジョンがテレビの前に座って 一人でゲームをしていた。

「ジョン帰っていたのかい、宿題は済んだだろうね」
私はジョンに尋ねた。
「うん、パパ宿題は帰ってきてすぐにやっちゃったよ」

「ゲームばっかりしていちゃ駄目だぞ、もうすぐ夕御飯に なるからゲームを止めにして手を洗ってきなさい」

「わかったよパパ、でもちょっとこれを見てくれない、 このゲーム新しく出たばっかりなんだけどすごく面白いんだ、 昔『シムシティ』というゲームがあったでしょ、都市が発展したり 滅びたりするやつ、このゲームはそれに似てるんだけど、細かな 設定をすると人間や生物が進化したり滅亡したりするんだ。
とっても複雑で信じられないほど面白んだ」

「面白そうだね、だけどジョンもうすぐ夕食だからゲームを止めにして 手を洗って来なさい」
そう言って私は横にいる妻のキャサリンの方を見た。

キャサリンンはまるで亡霊にでも会ったような蒼白な顔をして ゲームが映し出されているテレビ画面を凍りついたように視ていた。

開け広げられた窓のカーテンが僅かに揺れて、じっとりとまとわりつくような 部屋の空気が少し動いた。
  

2009年12月19日 Posted by igoten at 07:10Comments(4)SF

毛嫌い


これはもうずっと以前の話である。

その巨大な宇宙船は地上の物を破壊しないようにゆっくりと 降下してきた。
そして静かに着地するとその宇宙船のほぼ中央付近にある 入り口が開きその中から未知の生物が2匹現れた。

その生物は驚いて見ている我々の前に進み出ると、光る箱の 様な物を通してゆっくりと我々の言葉で話し始めた。

「我々はこの宇宙を航行し特殊な機械を使って未知の生物を探している。
そして未知の生物を発見しもしその生物が他の生物と意思の疎通が出来るほど 進化した生物であれば我々との文化の交流を提案する。

我々は一切ほかの星を侵略したり、他の生物に危害を加える つもりはない。
もしあなた方が我々の提案を拒否するのなら、 我々は何もしないで静かに立ち去るであろう。

2週間経ったら我々はまた今日と同じようにこの星を 訪問するでしょう。」

そう言うとその生物の乗った宇宙船は来た時と同じようにゆっくりと 空の中に消えていった。

宇宙船が去った地上は大騒ぎであった、さっそく各国から 集まった代表による会議が連日開催された。

その会議での最大の論点はこの未知なる生物が我々に危害を加える 恐れが有るか否かであった。
さっそく各国から様々な分野の学者が集まってこの問題に関して 徹底した議論がなされた。

その結果学者たちはその未知の生物が我々に危害を加える可能性が 極めて低いという結論を出した。
しかしその一方で我々よりかなり進化した生物と文化交流を することにより、我々の固有の文化が破壊されるかもしれない という懸念と、未知の生物により我々が想像だにしない病気が 運び込まれる危険があると警告する者も現れた。

会議は連日連夜行われたが結論を出すに至らず、結局この星の 全住民による投票で決めることになった。
そして投票は速やかに行われ、開票され結論が出された。

やがて約束の2週間が過ぎ、前と同じように宇宙船が 降下し、中から前と同じ1組の生物が現れた。

そしてその未知なる生物が地上に降り立つ時を見計らって、 我々の代表がその生物の前に進み出てこの星の結論を伝えた。

我々の結論は「提案を拒否する」であった。

未知なる生物は我々の結論を静かに聞いていたが、 聞き終わると一言も言わずに静かに小型の宇宙船に 乗り込むと我々の目の前から去って行った、そして 2度とこの星に現れることは無かったという。

この話はもう何代も語り継がれている。
そしてこの話を最初に聞いた子供は必ず 「どうしてその生物の提案を受け入れなかったの?」と尋ねる。

子供たちにこの話をしていた年寄りはこう聞かれると 必ず眉をひそめ「理由は簡単なことだったんだよ」と答え、 そして声をひそめて次の話をするのである。

その未知なる生物は見るも恐ろしい姿をしていた。
彼らの顔と思われる部分には、殆ど毛と言うものが無く、 それは我々の種族が最も恐れている、ひどい皮膚病で体全体の 毛が殆ど抜け落ちてしまったような、そんな様相をしていたのだと。

しかもその顔は所々醜く腫れ上がっており、 皮膚にはひび割れとしか思われない場所が 何箇所かあって、時々その傷が閉じたり開いたりしていたと 言うのである。

そして更に恐ろしいことに彼らの足はたった4本しかなく、その中の 2本の足で立ち上がり、しかもそれで歩いたのだと言うのである。

その様子を老人から聞く度に子供たちは怖がって柱の 陰に隠れて、そしてその生物の前に進み出て「拒否」 を表明した人の勇気を讃えるのだった。

  

2009年12月09日 Posted by igoten at 07:12Comments(5)SF

研究者たち















助手:「教授、ついに研究が完成しました」

教授:「ほう、完成したかね」
   「ところで君の研究のテーマは何だったかな?」

助手:「はい、擬態に関する研究です」

教授:「擬態かね、それでどんな?」

助手:「キアゲハの幼虫を見ていて気付いたんですが、
    キアゲハの幼虫は実に上手に周りの物に擬態します、
    そこでその遺伝子を分析して人間に移植する
    研究です」

教授:「人間が擬態するのかね? そんなことをしたら
    誰が誰か見分けがつかなくなって困るのでは?」

助手:「大丈夫です教授、人間の擬態は自分の意志で
    コントロール出来ますから、今からやってみますから
    ごらんください」

そう言うと助手は着ているものを脱いで、教授の部屋に
あった本箱に擬態した

助手:「どうですか教授」

教授:「これは驚いたどう見ても本箱にしか見えないな」

助手:「そうでしょう、ここまでなるに16年かかりました」

教授:「16年か、まあ何の役に立つかは判らんが、クラゲが
    光るのを研究してノーベル賞をとった人も
    いるくらいだからとりあえず論文を書いて
    学会に発表したまえ」

助手:「ありがとうございます、教授」

教授:「それと今日はゆっくり休みたまえ」

助手:「はい教授」

何年ぶりかで街に出た助手は昔良く通った
赤提灯ののれんをくぐった。

久々の酒は、はらわたに沁み通った。
すっかり研究完成の美酒に酔いしれた助手は
飲み屋を出た。
それは蒸し暑い夏の夜であった。

たまらず助手は着ているものを脱ぎ出した、研究室では
いつもそうしていたのだ。
しかしその頃はもうだいぶ酒が効いてきて、
頭は朦朧となり、そのまま路上で寝てしまった。
しかも道路に擬態して。

折悪くそこに大型トラックが.....

運転手:「変だな、いま何かはねたような音がしたが、
      路上には何もなかったし、気のせいか」


  

2009年11月12日 Posted by igoten at 07:15Comments(4)SF

携帯天国(2)




営業担当:「課長ソフトバンカー社製の携帯電話の
       売行きが2か月で突然止まりました」

課長:「思った通りだな、しかし弱ったことにわが社の
    携帯電話も全く売れないのだ」

営業担当:「何故なんでしょう、課長」

課長:「きみ、考えてもみたまえ、いったい何人の人間が
    電話で本当のことだけを話すと思うのだね。
    こちらの嘘が電話の相手に全て判ってしまうとしたら
    誰が電話なぞかけようとするのかね」

営業担当:「しかし課長このままでは誰も携帯電話を使用しなく
       なります。
       そうなれば我社も壊滅的な打撃を受けることは
       必至となります」

課長:「そうだな、これは相手も助けることになるが
    仕方ないだろう。 あれを販売しよう」

営業担当:「あれですね」

間もなくNTTドッチモ社から『偽装声紋機能付き携帯電話』が
新しく販売された。
この携帯電話機は、しゃべる人の声を全く抑揚のないものに
変換してしまうもので、こうすると嘘発見器など全く
役に立たなくなった。

そしてこの携帯電話はあっという間に普及して、人はまた
前と同じように安心して携帯電話で話すことが出来るように
なりました。
  

2009年10月01日 Posted by igoten at 07:09Comments(7)SF

携帯天国(1)



SFの中には現実すれすれと思われるような話もある。


技術者:「主任、懸案の携帯電話の開発が完了しました」

主任:「そうか完成したか、さっそく見てみよう。
    なるほどこれがその携帯電話かね?」

技術者:「はい主任、この横に付いているインジケーターで
     相手が話していることが本当か嘘か判別出来るように
     なっています。
     たとえば一番下のグリーンのLEDが点灯している時は
     話の内容は真実です。
     黄色の時は半分は嘘ですね」

主任: 「なるほど、インジケーターが赤になった時は相手の
     話は真っ赤な嘘と言うことだな」

技術者:「そのとおりです主任」

主任:「それでこの嘘発見器の原理はどのように
    なっているのだね」

技術者:「はい、人間の声を分析していて気が付いたのですが、
      人が嘘をつく時はその声に独特の声紋が現れます、
      この携帯電話は相手の話声からその特徴ある声紋  
      を見つけ出して表示するのです」

主任:「なるほど、それは素晴らしい、これがあれば振り込め詐欺
    などは全く無くなってしまうわけだな、さっそくこれを
    商品化して売り出そう。
    これでわが社の携帯電話の市場占有率は飛躍的に
    高まることは間違いないな。
    君の2階級特進を上申しておこう」

技術者:「ありがとうございます主任」
  
   ソフトバンカー社はこの嘘発見器付き携帯電話を
   華々しいコマーシャルとともに売り出したのである。
   そしてこの新製品は爆発的な販売数を記録したのであるが
   しかし.....

  

2009年09月30日 Posted by igoten at 07:10Comments(2)SF

ミオ(2)



西暦2053年、突然空から大量の鳥が降ってきた。
それは人間にも感染するウイルスによるものだった。

このことはある程度は予想された事態で有ったが、
そこに大きな落とし穴が待っていた。
このウイルスは人間が予想して備えてきたウイルスとは
基本的に異なる種類のウイルスだったのだ。

人々がこのウイルスの本当の脅威に気づくには
それほど時間がかからなかった。
このウイルスは、人に感染する度に進化をとげた。
そして新しい形態に変わることにより、ワクチンに
頼ろうとすする人間の知恵をあざ笑うように、
いとも簡単に人の持つ免疫システムをすり抜けた。

更に恐ろしいことに、一度このウイルスに感染して
治癒した人も、再び進化したウイルスに感染したのだ。
そして街からは次々と人々が姿を消していった。
今まで人々でにぎわっていた街々は累々とした人と
鳥の屍(しかばね)で埋め尽くされていた。

私とジョンはいち早く危険を察知して、山に逃げ込んだ。
山に居た人達にとって、初めのうちは町に居た人達より
ウイルスの脅威は少なかったが、しかしそれも時間の
問題であった。
やがて我々の周りに居た人達も次々にウイルスに
犯され始めた。

私とジョンは安全を求めて更に深い山に踏み込んだのだ。
そしてしばらくして出てきた時に観たものは、
今までの繁栄がまるで嘘のような、面々と続く廃墟であった。

『とにかく人を探さなくてはならない』
その強い思いが湧きあがってきた。
多分それは何万年もの間に私たちの遺伝子の中に
組み込まれてきた使命感で有ったのかも知れない。

そして私はジョンを伴って、人探しの旅に出たのだ。
多分この町にも生き残っている人は居ないだろう、
ジョンがもし言葉をしゃべれたらどんなにか心強かった
ことか。
しかしそれは無理な注文であった、この美しい毛並みの
忠実な犬は私がいくら望んでも言葉を話すことは出来ない。

人がいない街などに用はない、こんなところで躊躇している
暇はないのだ。
今夜やあの向こうに見える小高い山の中で一夜を
過ごそう。
あの山の向こうにはもしかしたら人が住む街があるかも
知れない。

私はそう思いながらジョンに呼びかけた。
「ミヤオ!」
私は人間からは『ミオ』と呼ばれていた。
ジョンは振り返ると、私の自慢の三色の毛並みを持つ
引き締まった体のにおいを少しの間嗅いでいたが、
私が走り始めると、低く唸りながら私の後に続いて走り出した。

  

2009年09月25日 Posted by igoten at 07:11Comments(5)SF

ミオ(1)



一体我々は何日間彷徨(さまよ)って居たのだろうか。
そしてこの旅はいつまで続くのだろうか。
人々は一体どこに居るのだろうか。

山を超え川を渡り、幾つかの廃墟の町を通り過ぎた。
どこに居てもいつも危険はついて回った。
その度に我が友のジョンは私を助けてくれた。
ジョンは私より大きいゴールデンレトリバー犬だ。
もしジョンがいなければ多分私はここまで生き
残れなかっただろう。

廃墟の町では、誰も居ない街角で寝た。
山の中では岩陰で、森の中では木の下で寝た。
時々襲ってくる野生化した犬やその他の獣たちから
身を守りながら。

人間の作り出した文明はもろかった、人々が
居なくなると夜の町からは光が消え、
雑草が生い茂った。
町は常に静まり返っていたが、時々思い出したように
建物の崩れ落ちる音が響いた。

やがて町の中では食べ物を探すことが困難
なことに気がついた我々は昼間は街の中で人を探し、
夜は森や山で食べ物を探してそこで寝た。

とにかく人を探さなければならない、私は
その使命感に燃えていた。

明日はあの丘を越えて行こう。
そこには一体どんな街が我々を待っているのであろうか。
そしてそこには果たして人は居るのであろうか。

つづく... ----------------------------------------------------------
         お知らせ
ブログチェッカ NBC.exeをお使いの方は、
バージンアップの必要がありますので
ブログチェッカHELP
のHELPの(お知らせ)を読んでね。
----------------------------------------------------------
  

2009年09月24日 Posted by igoten at 07:28Comments(2)SF

ケー(2)




看護師 「先生、13号室の女の子の病状は
     相当深刻ですね」

医師  「そうだな、あれだけ激しく殴ったのだからな」

看護師 「先生、このまま現在の治療方法を
     継続するのですか?」

医師  「やむおえまい、他の有効な治療法は
     見つかっていないのだから。
     それはそうと、君が帰る前にもう一度
     13号室の女の子を観て行ってくれ。」

看護師 「はいわかりました、先生」


13号室:患者名 桜井 恵(ケイ)
     性別  女
     年齢  6歳
     病名  突発性暴力障害

2050年代になってから、5~6歳前後の子供が
突然切れて、危険な行動に走る事例が急増した。
この症状は何の前触れも無く起こり、ひたすら
他人を傷つけたい衝動に駆られる。

一般的に子供は成長過程である意味残酷な面を
持っているがこの精神疾患はそれが増大される
ものと考えられる。

この精神疾患が引き起こされる原因は不明であるが、
環境ホルモンの人への蓄積が原因ではないかとの説が
有力視されている。

完全なる治療方法は今のところ見つかっていないが、
緩やかな家族環境で気長に生活させる訓練をすると、
徐々に回復する場合が多い。

ただしこのような患者を通常の集団生活の中で
暮らさせることは他のメンバーに対して危険を伴うので、
特別にこの病気の治療用に開発された家族型ロボットと
呼ばれる子供一人と両親の構成のロボットが医療現場で
使用される場合が多い。

この症状を起こした子供は攻撃対象が逃げたり
自己防衛に走ると、症状を更にエスカレートさせるため
家族型ロボットは通常は自分に対する攻撃に対し
「自己防衛」を行うことは無い。

このロボットの型式番号はMS10であるが、子供の
ロボットは「ミー」と呼ばれている。

----------------------------------------------------------
         お知らせ
ブログチェッカ NBC.exeをお使いの方は、
バージンアップの必要がありますので
ブログチェッカHELP
のHELPの(お知らせ)を読んでね。
----------------------------------------------------------
  

2009年09月22日 Posted by igoten at 07:00Comments(6)SF

ケー(1)

----------------------------------------------------------------
           お知らせ
これは本文とは関係有りませんが、「ブログチェッカ」
をお使いの方はこの下の(お知らせ)を読んでね。
----------------------------------------------------------------

ロボット3原則
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
   また、その危険を看過することによって、
   人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に
    服従しなければならない。
    ただし、あたえられた命令が、
    第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に
    反するおそれのないかぎり、
    自己をまもらなければならない。



「おかあさん、ごはん食べちゃったらケーとあそんでいい。」
夕飯の時ミーちゃんはお母さんに尋ねました。
「いいわよ、ただしご飯はしっかり食べるのよ。」
お母さんは言いました。
「はい。」
ミーちゃんはそういって夕食のおかずのハンバーグに手を
伸ばしました。

夕飯が済むとミーちゃんは居間にいるケーの所に行きました。
「ケーあそぼ」
ミーちゃんは言いました。
「いいよ、何して遊ぶの」
無表情でケーが言いました。
ケーは何時も無表情です。

「美容師ごっこがいいかな、ミーちゃんが美容師で
ケーの頭をセットしてあげる」
ミーちゃんはそう言ってケーの後ろに回って、
ケーの髪をしばってあるリボンを解きました。

「ケーはどんな髪型が好きなの?」
ケーの髪を優しくとかしながら、ミーちゃんが聞きました。
「どんな髪型でもいいよ」
ケーが答えました。

ミーちゃんは丁寧にケーの髪を3つ編みにしました。
「ケーとても素敵よ」ミーちゃんはそう言ってケーに
手鏡を渡しました。

ケーはその鏡を受け取って自分の顔を見ました。
そして言いました。
「なによこれは!」
そう言うとケーはいきなりミーちゃんの顔を
手鏡で殴りつけました。

「いたい!」ミーちゃんは殴られた顔を手で押さえて
叫びました。
手の間から鼻血が出ていました。
「おかーさん!」ミーちゃんはお母さんを呼びました。

「どうしたのミーちゃん」お母さんがキッチンからとんで
来ました。
「ミーちゃんだいじょうぶ?」
お母さんは叫びました。

その時は既にケーはミーちゃんに馬乗りになり、手鏡で
所かまわず殴りつけていました。

「おとうさんはやく!」お母さんが叫びました。
おとうさんも直ぐにとんできました。
「ミー大丈夫か?」お父さんが叫びました。

遠くで救急車のサイレンの音が鳴っていました。
続く。。。。


(お知らせ)
NBC.exeをお使いの方。
現在お使いのNBC.exeはブログが込んでいる場合に
誤動作を起こす可能性がありますのでプログラムの更新を
お願いします。

2009年9月20日に新しいバージョンをアップロード
しています
新しいプログラムは
setup.lzhのダウンロード
でダウンロード出来ます。

最新版をインストールするには、以前のプログラムを
一旦削除します。
削除するには
「スタート」-「設定」-「コントロールパネル」
-「プログラムの追加と削除」-「ブログチェッカー」-
「変更と削除」で削除します。

この後setup.lzhを解凍して、setup.exeを実行します。

なお更新を行うまではNBCの使用はお控えください。
お使いの方ご迷惑をおかけします。m(..)m
  

2009年09月21日 Posted by igoten at 07:00Comments(6)SF