犬と散歩
我が家の飼い犬「コタ」は雑種で駄犬でありどう見ても
頭の良い犬とは言えない。
雑種を飼うようになったのには訳がある。
この犬の2代前に飼った「富士丸姫号」と言う何ともいかめしい
名の柴犬は、日本一になった犬を親した素晴らしい
血統書を持った柴犬だったがとても偏屈な犬だった。
もちろん飼い主が偏屈でその性質が移ったという見方もあるが、
我々家族はそうは思わず、その性質は長年行われた血を守る
交配によるものと考え、純血種はダメだ、雑種にすべしとの
結論に達したのである。
さて我が家のコタであるが、特筆すべき癖が有る。
「二度の飯より散歩が好き」なのだ。
飯は抜いても散歩を抜くことは許してくれない。
この犬が来てから10年余り一度たりとも散歩を欠かした
日は無かったのだ。
一度など我々夫婦がインフルエンザにかかり、病の床に伏した
ことがあったが、その時も寒い冬空の中私は着こめるだけ着込んで
犬に引っ張られてトコトコと散歩に出かけた。
このところ毎日雨が降る。
ザアザア降りの雨の中でも、我が家のコタは嬉々として散歩に
出かける。
誰一人として会うこともない薄暗くなった梓川の土手の上を
横殴りの雨に濡れながら、まるで影絵のように歩く人と犬は
そのまま秋の夕暮に溶けてしまいそうになるのだ。