馬には申し訳ないが

まず次の文章を読んでいただきたい。
ここ伊那谷は馬肉。
そしてその刺身ときたら、年齢職業を問わず、花恥ずかしき
乙女から荒くれ男の別なく、馬サシしと聞くと忽(たちま)ち
天をあおぎ目を細め、うっとりと所謂(いわゆる)恍惚の表情になり、
まんず『ああ』と一息、深い溜息をつき『ああ、馬サシ』とうなり
『こんなうまいおいしい至味は外にはないに!』といわずにはいない。
そうずら?そうだに。
この表情を見、この言葉を聞いた他所者(よそもの)は忽ち
口中によだれの満るのを感じながら、この味わいのアクメ、
神さま仏さまの召し上がりものに違いないと思い込む
ばかりでなく、理論的必然から天国や極楽にも、ここの
馬肉屋の越後屋の出店があるに違いないと思いこまず
にはいない。
馬サシが無しでどうして天国面極楽面が出来る?
そうずら!
そうだに、そうだに
私の言葉を疑う衆はこの町を歩いてみると好い。
越後屋の店頭には馬が絶えずあるのに人目のつく
ところはには馬は一匹も歩いていないから。
何故か。
馬は怜悧な怯えやすい動物だ。
そうずら? そうだに。
だから馬は県人が馬を愛することの甚だしいのを
ショウガやニンニクに交わった同類のにおいで知り、
県人を怖ろしがって外に出て来ないのだ。
丁度、人類を愛することを最も甚だしい虎の野を
人間が歩かないのと同じだに。
これは、この前書いた丸谷才一さん
「食通知ったかぶり」にでている、のきだ・みのる氏が
雑誌『太陽』に投稿した文章だと言う。
この「食通知ったかぶり」もう絶版なんだけど、中古本
買いました。
これで当分楽しい夜が過ごせます。
私の女房は伊那谷出身だけど、この文章のまんまだに。
そうそう写真はwikiからの借りものなんだけど、wikiの写真が
あまりにも不味そうなので、私がちょっと加工して美味しそうに
見せてます。
そうだに。
2012年10月19日 Posted byigoten at 07:48 │Comments(4) │読書
この記事へのコメント
そうずら?そうだに。もうほとんど忘れていたなつかしい言葉です。確か、オタグリという食べ物(馬の)もありましたよね。
Posted by かりん at 2012年10月20日 18:22
かりん さん
ありました、馬のモツ煮でしたっけ。
酒の肴に最適でしたね。
ありました、馬のモツ煮でしたっけ。
酒の肴に最適でしたね。
Posted by igoten
at 2012年10月20日 18:58

こんばんは~(*^_^*)
「そうずら」「そうだに」・・伊那谷で使われていた言葉だとは、驚きです☆
私の住んでいる「三河」でも、かなり年配の方たちは、使っています。
やっぱり、南信は近いですねぇ・・。
「そうずら」「そうだに」・・伊那谷で使われていた言葉だとは、驚きです☆
私の住んでいる「三河」でも、かなり年配の方たちは、使っています。
やっぱり、南信は近いですねぇ・・。
Posted by まごころう at 2012年10月20日 20:27
まごころう さん
そうなんですか、方言は面白いですね、
昔の結びつきがよくわかります。
そうなんですか、方言は面白いですね、
昔の結びつきがよくわかります。
Posted by igoten at 2012年10月20日 20:54