羊をめぐる冒険

羊をめぐる冒険

村上春樹の評論、旅行記、短編集は殆ど読みつくして
しまった気がする。
仕方なく不得意な長編小説を読むことに。

彼の長編小説は、『海辺のカフカ』、『ノルウェイの森』、『1Q84 Book2』
しか読んでいないのだ。
そこで今回は思い切って『羊をめぐる冒険』を読んだ。

新聞で偶然彼女の死を知った友人が電話で僕にそれを
教えてくれた。

『羊をめぐる冒険』は上の文で始まる。
これは村上春樹独特の突然人が死んでしまう、いわゆる『喪失』を表しているのか。
そしてこれも毎度のことであるが、この第一章はストーリー的にはその後の物語とは、
何の関係も無い。

最後に彼のデビュー作『風の歌を聴け』で登場して、
『1973年のピンボール』にも登場した親友の”鼠”が死ぬのである。
あとはネタバレになるので書かない。

普通に読むと、この本はSF小説である。
『海辺のカフカ』もそうであるが。
でも誰もこの本をSF小説だとは言わない、なぜだろう。

物語は、『羊』と言う宿主が人間にとり付いて世界を変えようとする。
羊が目指す世界は次のように鼠が説明している。

「完全にアナーキーな観念の王国だよ。そこではあらゆる対立が一体化するんだ。
その中心に俺と羊がいる」


これは難しい言葉で書いてあるが、言っていることは極めて単純である。
”俺”は羊にとり付かれていて主体性は無いから、この世界は
羊を絶対の神とする世界である。
神の世界には対立は無いので、対立が一体化するのは当然であり、
全ての権威や制度が神に統一されるのでアナーキーとなるのも当然である。
すなわち羊が目指した世界は羊を絶対の神とする世界なのである。

『20億の針』 と言うSF小説が有った。
宇宙から悪い宿主が地球に来て、人間にとり付く。
それを追って良い宿主が地球に来てこれも人間の少年にとり付き、
そして戦いが始まる。
ただし悪い宿主が誰にとり付いているかは分からない、それは20億の針の
山から一本の針を探すようなものであると言うのでこの題名が付いている。
そしてアッと驚く人に悪い宿主が....。

20億は地球の人口でこの小説が書かれた1930年には世界の人口が20億人であった。
現在世界の人口は69億人、この方がSF小説より怖い気もする。

横道にそれてしまったが、村上春樹の小説では”小説のストーリー”と言うものには、
あまり重きが置かれないので、羊が目指す世界を詳しく分析しても意味がない。

さてこの小説である、結論から言うと”面白かった”である。
ストーリーは単純ながら(SF小説としたらと言う意味で)骨格はしっかり
しているし、内容も間違いなく『羊をめぐる冒険』だった。

『海辺のカフカ』は猫なんか出て来て、全体的な感じは好きであるが、いかんせん
物語の筋と言うか結末が私にはしっくり来ない。
(そこがとてつもなく好きだと言う人が居ることを承知で書いているのだが)

ただし『海辺のカフカ』の方が、出て来る人物(猫も含めて)なんかの描写は
格段に面白いと思う。
まあ『羊をめぐる冒険』を書いてから『海辺のカフカ』を書くまでに20年
かかっているからね。

『ノルウェイの森』で懲りた人、『羊をめぐる冒険』はお勧めですよ。


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2010年11月23日 Posted byigoten at 07:00 │Comments(0)読書

 
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