対岸の彼女



この小説は、角田光代の代表作で第132回
直木賞受賞作品である。

現在の自分の生活に漫然としない専業主婦の小夜子は
未婚で子供がいないベンチャー企業の女社長葵の
会社ででハウスクリーニングの仕事を始める。

この本はこの30半ばの二人の女性が主役である。
そして現在を小夜子の視点で、過去を葵の視点で
交互に語られるという複雑な構成でストーリーは進む。

葵は高校の頃友達と家出をして、自殺未遂の経歴がある。
どんどん崩れていく葵の青春。
いったいどうなってしまうのだろうかと読者は引き込まれる。
そしてその過去は小夜子との出会いにどのような影響を
与えるのだろうか。


この小説には、同じく第135回直木賞受賞作家の森絵都が
すばらしい解説を載せている。

「人に出会うということは、自分の中に出会ったその人の
鋳型を穿(うが)つようなことではないかと、私は
うっすら思っている。
その人にしか埋められないその鋳型は、親密な関係の終了
と同時に中身を失い、ぽっかりとした空洞となって残される。

相手との繋がりが強ければ強いほど空洞は深まり、人と
出会えば出会うだけ私は穴だらけとなっていく。
略....
....
人と出会うということは、自分の中にその人しか
埋められない鋳型を穿つようなことだと思っていた。
人と出会えば出会うだけ、だから自分は穴だらけに
なっていくのだ、と。
けれどもその穴は、もしかしたら私の熱源でもあるのかも
しれない。
時には仄(ほの)かに発光し、時には発熱し、
いつも内側から私をあたためてくれる得難い
空洞なのかも知れない。」森 絵都

森 絵都の解説を読むだけでも、この本を
手に取る価値はあるかもしれない。


追記:
しかし、いかに出張途中の電車の中と言え、朝の6時から
こういった本を読んでいる私は、まさにブログのタイトル
「本だけ持って」にふさわしい人間なのだが、
結構珍しい生物と言える。

  


2013年01月11日 Posted by igoten at 08:01Comments(5)読書