ある面接

「慣れてくると少し話をするだけで大体その人がどんな人か
分かるんですよね。」とその会社の人は話していた。
私は「そうですか、すごいですね」と相槌を打ちながらあることを
考えていた。
あれはもうかなり前のことである。
我が社で輸出関係の女性のアシスタントを募集したことが有った。
条件は簡単な英文が書ける女性と言うことで、募集に対して
2名の応募があり、さっそく私が面接をすることになった。
二人とも22歳位の女性で、一人は短期のオーストラリアへの
留学経験があるとのことであった。
面接の結果2人ともそこそこの受け答で、結構はきはきしていて
業務遂行には問題なさそうに思えた。
私はどちらの人にしようか迷ったが結局留学経験が有りと言うことで
最初に面接した女性を採用することにした。
さてその女性が働き出して驚いた、面接の時とは全く違って、
病的に挙動が遅く、全く周りとの会話が出来ないのだ。
勿論まじめで、簡単な英語の手紙などは書くことが出来るのだが、
朝会っても挨拶などはしない、と言うより他の人が目に入らないのだ。
私は「しまった」と思った、面接の時は相当練習してきたのだ、
私はすっかり騙されてしまったと思った。
そしてその後、もう一人の女性の方を採用すれば良かったという後悔の念を
ずーっと引っ張ったていた。
ところがそれから数年して、会社関係のある会合の懇親会に出席した。
そしてその酒宴の席にコンパニオンの女性が数人呼ばれていた。
宴会が始まって皆歓談している時、私が聞くとも無にちょっと離れた
所のコンパニオンの話を聞いていると、私の会社の話をしている。
「実は私あの会社受けたことあるんですよね」
と女性は言っている。
「貿易関係の仕事で英語が出来ることが条件だったかな」
と女性は続ける。
「へー、君、英語得意なの?」
と誰かが訊ねる。
「英語なんて全く駄目よ、半分冷やかしみたいなもので
受けただけで、やっぱり不採用になったけど」
と女性は言った。
私はその場にぶっ倒れそうになりながら、その話を聞いていた。
就職の面接は怖いな。
その時採用した女性は、結局8年位我が社に在籍して塾の英語の
先生をしたいということで退職した。
まじめでコツコツ仕事をしたが、最後まで挨拶などしなかった。
この女性会社のスポーツ大会なんかで、バレーボールをさせると
とてつもなく怖かった。
ボールが来ると、周りは一切見ないで物凄い勢いでボールに 突進するのだ。