胡桃の部屋



NHKのドラマ『胡桃の部屋』は面白い。
このに出てくるお父さんは、向田邦子のエッセイの中に
出てくるお父さんそのものですね。

そこで、既に何回か読んでいるのだが、本棚から向田邦子の 『父の詫び状』を探して、
出張に持って行き、電車の中なんかで
読み返してみた。

向田邦子のエッセイはユーモアが有って、情景描写が的確で、 人の観察が良く出来て素晴らしい

その中で『学生アイス』と言うエッセイがある。
向田邦子が学生の頃アイスクリーム売りのアルバイトをした時の
思い出を書いたものである。
下の文章はその最後に書かれているものだが、これだけ抜き出しても
立派に完結しているからすごいものである。


記憶と言うものは糸口がみつかると
次から次へと自然にほどけてくる。
アイスクリーム売りの最後の夕方、私達は五、六個余った
ジャーを抱えて明治神宮の表参道に腰を下していた。

相棒も私に義理立てして今日で止めるという。
残りは商売繁盛の記念に、通しかかった感じのいい人に無料で
進呈しようということになった。

ちょうどその時、五、六歳の女の子が、お豆腐でも買いに行くのだろう、
空の鍋を抱えて通りかかった。
呼びとめて、アイスクリームを鍋に入れ、お母さんに叱られるといけないから、
と事情を書いたメモを渡した、女の子は泣きだしそうな顔で見ていたが、
犬にでも追われるように同潤会アパートの方角に飛んで帰って行った。


  

2011年08月13日 Posted by igoten at 08:00Comments(0)読書