酒の虫

聊斎志異と言う本に『酒の虫』と言うお話がある。
昔中国のあるところに劉何がしという人が居た。
彼は丸々と肥っていて、酒好きで一度飲みだすと一甕あけて
しまうのが常だった。
一人の僧がその顔を見て言った。
「なにかおかしいところはありませんか」
「いや」彼は答える。
僧は言う
「いくらお飲みになっても酔わないのでは」
「そういえばそうだ」
彼は答える。
「それは酒虫のせいです」
驚いた劉は問う、
「簡単に治せますか」
簡単ですと僧は言う。
僧は劉をうつぶせに寝かせて、体を縛り付け、頭の近くに
旨い酒を入れた椀を置いた。
しばらくすると劉はのどの渇きを覚えた、そしてそれは段々と
我慢出来ないものになり、やがて何かをのどから吐き出した。
その何かは酒の椀の中に落ちると、その中でうごめいている。
良く見ると目や口が有るではないか。
劉は驚いて礼を良い、僧に礼金を差し出すが僧は受け取らず、
その虫が欲しいという。
以来劉は酒を敵のように憎むようになるが、そのうち次第にやせ細り
家も日毎に貧しくなり、そのうちに三度の飯にも事欠くようになった。
まあこんなストーリーであるが、この話はなんか深い含蓄ある気がする。
みんなお腹の中に何かしらの酒虫を持っていて、それはとても無駄なものに
見えるのだが、それが生きるエネルギーになっていて、無駄だと言って
取ってしまうと、腑抜けの人間になってしまう。
私なんかも何匹も”酒虫”を持っているが、これは大切にしなければ...