ネコの巣

以前ヒマラヤンと言うネコを飼っていたことがあった。
暗闇(くらやみ)で目が青くひかり、耳の先に少しばかりの
黒い毛があって、それがアクセントとなり、きりりとした
可愛いいネコで有ったが一歳くらいの時、突然死んでしまった。
車にはねられたのかも知れなかったが、見た限りでは外傷はなかった。
「洋ネコはだめだな。今度飼うなら純然たる日本ネコにしよう。」
私はそう言った。
しばらくして夕食時の家族会議で新しいネコを飼うことになった。
地元の新聞の『あげます』欄で、「子ネコあげます、種類 トラネコ」
というのを見つけ、私と妻と私の母と息子の4人で、
新聞に書いてあった住所に、お礼の魚の缶詰を持って、
子ネコをもらいに出かけた。
お礼はネコの飼い主に上げるのではなく、子ネコの親にあげるのだ。
昔は鰹節を持って行ったものだと母が言う。
ビニール袋に入った鰹節だとあまりにも艶消しなので
魚の缶詰にしたのである。
家を出る前に私はもらって来る子ネコの為に、
家の外での居場所を作ってやろうと、家の外の下駄箱の上に
段ボール箱を乗せ、その中に布を敷いて寝床を作った。
いわゆるネコの巣である。
子ネコだとちょっと下駄箱の上に登りにくそうなので、所々に
板を出して、下からネコが登り易いように細工をした。
新聞にでていた家は団地の中の、こじんまりした平屋の家であった。
出迎えてくれたその家の奥さんは32~33才くらいで
私たちが前もって訪問を告げてあったので、3匹の子ネコを
腕に抱えて、「気に入りますかね」と少し心配そうに私の息子の
顔を見て言った。
「普段はあすこにいるのよ。」とその奥さんは玄関を入って
すぐの右側の人の背丈位の高さの下駄箱の上の方を指して言った。
そこのは小さなダンボール箱が置いてあった。
奥さんが抱いていた子ネコは我々が思っていた通りのごく普通の
日本ネコだったので、我々はそのうちの一匹をももらい受けて、
家族4人にこにこしながら帰ってきた。
家に着いて、妻が子ネコを抱いて車から降り、家の近くの地面
にそっと置くと、その子ネコはためらわず、そばにあった
私が居場所を作ってやった下駄箱の上にトントンと
上がって、あっけにとられて見ている我々をしり目に
その巣の中に入り丸くなった。
我々家族は相談してその子ネコに『ねろ』と言う名前を付けた。
そしてねろはその日から我が家の住人になった。