とにかくおかしい


アメリカン・スクール
小島信夫 (著) 


いやぁ、とんでもない小説があったものだ。
この「アメリカン・スクール」の中には8編の短編が
収められている。
これを読もうとしたきっかけは、村上春樹の
『若い読者のための短編小説案内』の中に
この短編集の中に収録されている『馬』と言う
短編に関する解説が載っているためである。

最初の短編は『汽車の中』と言う題名で、終戦直後の日本を
背景にしており、『佐野』と言う名前の男が、妻と二人で買出し帰り、
列車のデッキに片足だけ乗っけて片手でつかまり、走行中の列車から
落ちる落ちないのドタバタから始まる。
ドタバタと言っても、大立ち回りがあるわけではなく、ちょっと
そっちの足をもう少し中にどけてくれとか、お前の荷物が
顔の上に乗っかったとか、そういった小競り合いのドタバタである。

やがてこの男は、全く体の自由の利かない列車の中で
自身の生理的欲求に耐えられず、周りの嘲笑のなかで
水筒にトイレの代わりをさせてしまう。

この小説最初から最後までおかしいのであるが、なにが
おかしいかと言うと、何がおかしいんだろう、とにかくおかしい。

最後にこの夫妻列車の中で、自分たちの荷物を取られてしまう。

「今までなにしてたの」
「眠っていたのだ!」
「眠ったり、ご不浄したり、あんたは何のために汽車に
のっているの」
あみ棚の男が、今までにない真面目な顔をおこした。
「そいつはな、さっき、そこにおった小父さんが下したがな。
あんた知らへんなんだのか」
「僕は眠っていたから知らなかった」
「ああ盗られたわ、車掌さん!泥棒よ。まあ、どうしよう。
あの男だわ、あんまり何でも世話をやきすぎると思ったわ。
あんたは、それにも気がつかないで。
あんたが意気地なしだからよ。あの中には。。。。」
と言って細君は急に言葉をきって、車掌の方を眺めたが、
「馬鹿!けちで意気地なしで、汚くて、そのくせ物は
気前よく盗られる。よくも自分の体は盗られないわね。」
佐野は自分のからだも序(ついでに)に盗られてしまえばよかったと
思った。

表題の「アメリカン・スクール」も、もうなんか可笑しいし、
村上春樹に言わせると、あっちの世界に行きそうで、
危ういところで留まっている小説なのだ。

更にこの中の『馬』と言う短編は、こっちの世界にいるようで
すでにあっちの世界にいるようなそんな危ない小説で、
とてつもなく可笑しい。
この小説とても私ごときが解説できる代物ではなく、
明日再び村上春樹の『若い読者のための短編小説案内』に
登場願う。

とにかくこの短編集は、小説を読んで一度頭がおかしく
なりたい人には是非お勧めの短編集なのだ。
ああおかしい!


  

2009年07月31日 Posted by igoten at 07:04Comments(4)読書