ぬくもりのある小説

村上春樹の小説やエッセイには猫がよく出て来る。
彼が猫好きなのは疑いも無いことなのだが、「雑文集」には
こんな文章があった。
ずいぶん昔のことになるけれど、二十代初め、結婚したばかりの頃、
本当にお金がなくて(というか事情があって借金をたくさんかかかえていて)、
一台のストーブを買うことも出来なかった。
その冬はすきま風の吹き込む、東京近郊のとても寒い一軒家に
住んでいた。
朝になったら、台所に氷がばりばり張りまくっているような家だった。
僕らは猫を二匹飼っていたので、眠るときは人間と猫と、みんなで
しっかりと抱き合って暖をとった。
(中略)
生きていくにはきつい日々だったけれど、そのとき人間と猫たちが
懸命に醸し出した独特の温かみは、今でも思い出せる。
「雑文集」の中の「温かみを醸し出す小説を」から抜粋
猫というのは危険な動物である。
飼っているといったい人間と猫とどちらが主人なのか分からなくなる。
というか飼えば飼うほど猫が主人で人間が従者になっていくのが分かる。
そして猫好きにはそれがたまらなく嬉しいと言う倒錯感が生まれる。
この感覚は犬なんかだと多分出来ないし、他のペットなんかでも、
生まれないと思われる。
こういう感覚をフロイト的に解釈するとどうなるのだろう。
まあとにかく猫は危険だから、飼わないに越したことは無いんだが、
冬になるとなんか猫を一匹飼いたくなる。
特に信州の冬は寒いからね。