旅行記 村上春樹

GREECE アトス 神様のリアル・ワールド
アトスとはギリシャの最も東にある半島である。
アトス山はギリシャ人が「聖なる山」と呼ぶ聖域である。
ハルキディキ半島の最も東の「足」にあたるこの半島は、
標高2033mに達するアトス山と、そこから連なる峻険な稜線によって形成され、
海岸はほとんどが崖か岩場から成り立っている。
ここはギリシャ正教の聖地で修行の為の修道院が幾つかある。
この本は村上春樹がカメラマンの松村映三とともにこの聖地を旅した
旅行記である。
この本の面白さは図らずも過酷な旅となってしまったこのアトス旅行を、
リアルな感じで書いているところにある。
つまり何時ものどことなく人を食ったような村上調の旅行記では無く、
”切羽詰まったトラベラー”の感じが出ている。
「よくわからないことがあるんですが」とカメラマンの松井君が云う。
この人は普段はにこにこしてあまり喋らないけど、口を開くとわりに
根源的な疑問を提出することが多い。
「あそこの坊さんたちですけど、どうしてあんなにひどい飯を食っていて、
それでもまだ太るんでしょうね?
猫だってがりがりにやせているのに」
そういわれてみれば、腹が出ている坊さんはけっこう沢山見かけた
ような気がする。
血色だって悪くなかった。
毎日あんな粗食を少量しか食べなくて、日々の労働もきついのに、
どうして太れるのか?
粗食とエクササイズはダイエットの基本である。
あんな生活を何年も続けていて、それでもなお太るのなら、ダイエットなんて
世界上からあっさりと姿を消してしまっているはずである。
猫も出てくるし間違いなく村上調であるが、『遠い太鼓』などとは一味
違った旅行記である。
猫は村上春樹にとって特別な動物で、猫を通してその国の生活を推測
使用とするところが彼には有る。
確かに猫が何を食べているかでその国の豊かさが分かったりするが、
それは犬も同じことである。
彼と猫とのかかわり合いは、若き日に食い詰めて奥さんの実家に
飼っていた猫ごと引っ越した時から始まるようだが、その話は
結構面白かったが、どの本に書いたあったかは忘れた。
[付]
おおかたが仕事の旅行だったが、殆ど一人で旅行した私に言わせると、二人で
旅行するのと、一人で旅行するのは雲泥の差が有り、二人なら相当な
所に行ってもかなり心強い。
イタリアなんかの暗い路地で泥棒に囲まれても、2人いれば前と後ろは
ガード出来るし、一人がお金をすられても、もう一人がすられなければ
何とかなるし。
旅は間違いなく道ずれなのである。