知りたくない

その昔中国は宋の時代に、呂蒙正(りょもうせい)
という宰相がいた。
ある時呂蒙正が朝廷の入って来た時、簾(みす)の
蔭から呂蒙正を指さして、「こんなつまらない男が
参政とはね」と悪口を言った男がいた。
呂蒙正は知らぬ顔で通り過ぎたが、周りの者が
勇んで、けしからん、悪口を言った男を調べてやる、
と息巻いた。
呂蒙正はそれを止めて、「なまじ知らない方がいい、
人を問い詰めなかったからと言って、こちらが損を
するわけではない。」と言った。
この話はたちまちのうちに広がり、呂蒙正の器量の
大きさが知られる様になった。
『知る無きに如(し)かず』
(かえって知らない方が良い)この言葉が、自分と他人と組織とを
生かしたのである。
怒る時は自覚して怒るのだ、我を忘れて怒って
はいけない。
「中国古典の言行録」 宮城谷昌光 著