上には上が(ショート・ショート)




『ユンボ』はショート・ショートにしては
長いし、短編にしては短いという、中途半端な
ものでした。
そこで昨日の柔道を書いたときに思いついた
ショート・ショートを一発。


「監督! ようやく頼んでおいたロボットが
出来あがってきました」

「おお!やっとできたか、さっそく試してみよう」

そう言うと監督は着ているものを脱ぎ、
白い柔道着に着替えると柔道場の
真ん中に立った。

この監督こそ、その昔のシドニーオリンピックの、
柔道日本代表で無差別級の金メダリストなのだ。

ロボットも柔道着をつけて監督と
向かい合い、静かに立っている。

「行くぞ、 えい!」
掛声もろとも監督はロボットの
柔道着の袖を掴むと、得意技の一本背負いで
投げ飛ばそうとした。

ところがそのロボットは監督の投げに対して、
ひょいと左側に回り込むと、そのまま監督の
両方の袖を掴んで逆に二本背負いで監督を
投げ飛ばした。

「確かに強い!  これで日本柔道の将来は安泰だな」
監督は満身の笑みを浮かべ、ゆくり起き上がった。

3か月後、彗星のように現れた日本の
柔道選手が、オランダ ロッテルダムの柔道
会場に立っていた。

この柔道選手は並みいる強豪を退けて、
難なく決勝まで進出して行った。

決勝で対戦する相手は今まで日本人選手に
何度か苦杯をなめさせた中国人選手である。

柔道会場の真ん中で二人は向かいあった。

「今日こそ積年の恨みが晴らせる」
日本側の応援席にいる柔道の監督の
顔は余裕に満ちていた。

「はじめ」審判が掛声をかけた。

と、中国の選手はすばやく日本の選手の襟と
袖を掴み、そのまま上に持ち上げるが早いか
日本選手を畳に上に叩きつけた。

「一本!」審判が中国人選手の勝ちを
宣言した。

畳に叩きつけられた日本選手は
かろうじて立ち上がり、痛めた足を引きずって
退場した。

「ふん、いまごろロボットなど出しても遅い。
我が国は既に5年も前から、日本製の
ロボットを出場させているんだ」

中国側の柔道監督はそうつぶやいて、
日本応援団席にいる、日本側の監督を
一瞥すると、鼻で笑った。

お後がよろしいようで。
  

2009年09月02日 Posted by igoten at 07:03Comments(8)SF