危機8 

上がその娘であるが、これが結構大変な代物であって...

当時はインターネットなどと言う便利なものはなかった。
自分や家族の病気はもっぱら「家庭の医学」と言う赤い表紙の 家庭向けの医学書から得ていた。
いわゆる「赤本」と言うやつである。
その本は症状毎に病気の名前や特徴が書いてあり特に子供の病気などは これを見ておよその見当をつけて医者に連れて行った。

私の家族の場合子供の病気は日本人がよく行く小児科が近くにありこの医師は きちんとした英語を話した。

駐在員にとって子供の病気は自分の病気以上に心配なものである。
しかもそれは極めて親の都合の悪い時を見計らってやってくる。

有る時私は2週間の出張に出かける予定があった。
その前の日に私に家から事務所に電話があった、こういうときは決まって悪い知らせである。
女房が言うには娘の容体が悪く39℃位の熱が有って娘の舌に赤いぶつぶつが出来いる、 多分猩紅熱ではないかと言うのである。

私はあわてた。
何はともあれ急いで帰宅した。
確かに娘の舌にはぼつぼつがあって「家庭の医学」を見ると猩紅熱と書いてある。
当時日本では猩紅熱は法定伝染病で隔離された。
私は焦って小児科に電話をする。
英語で猩紅熱は「Scarlet fever」(スカーレット・フィーバー)と言う素敵な名前が ついている。

電話に出た看護婦に「娘が猩紅熱にかかった」と言った。
「Why?」(なぜ?)どこか人を小馬鹿にしたような返事が返ってきた。
「My daughter's tongue looks like strawberry.」(娘が苺舌だから)と私が答えた。
「Possible」(可能性はある)完全に馬鹿にしてる口調で有った。
素人にそんなことがわかるかというような。
それでも一応はクリニックの裏の入り口から入ってくれと言うことで、 私と女房は娘を連れてクリニックに行った。

私の娘を一通り診察するとその小児科医は「これは猩紅熱である」と言った。
「ほらみろ」と私は言いたくて周りを見たが、どれが電話に出た看護婦か 分らない。
それより何より娘が隔離などされたら大変である。
私は女房と顔を見合せて医師の言葉を待った。

「薬を飲んで寝ていれば治ります」と医師は言った。
ドイツでは猩紅熱は法定伝染病では無かったのだ。
その後日本でも猩紅熱は法定伝染病から外れた。
この病気は抗生物質でよく治癒するとことで、 医師は子供用の抗生物質を処方してくれたのである。
当時からドイツは完全医薬分業である。

クリニックから出る時、先ほど電話に出た看護婦が来て 「日本人の奥さんは信じられない」と言った。
クリニックに来る奥さんはことごとく子供の病気を言い当てて やって来る、こんなことはドイツではありえないと言うのである。
まあこちらだって死に物狂いですからね、「赤本」もあるし。

と言うことで私も腰の痛みについての知識は殆どがこの 「赤本」から得たものであった。
それによると間違いなくこれは椎間板ヘルニアではないか と私は疑っていたのだが......

つづく。。。
  

2010年02月08日 Posted by igoten at 07:12Comments(0)危機