危機9

「ウーン 神経痛かな」石田先生は言った。
石田先生は50歳位の小柄で比較的愛想のいい先生であった。
しかしも何とも頼りない診断である。
しかしこのクリニックは結構色々な設備が有った。
そして私に対する最初の治療方法は「逆さ吊の刑」である。
先ずスキー用の靴を履かされた。
次にぶら下がり健康器具に似た器具下の方に金具が 付いていてそれに靴を留める。
そして横のハンドルを回すと後ろに有るテーブル毎回転して、 足を上にして吊るされる感じとなる「逆さ吊りの刑」が完成する。
よく江戸時代の拷問で縄で足を縛られて逆さに吊下げられ、 竹か何かの棒でたたかれている絵がありますよね、あれの 棒叩きの無いバージョンだと思っていただきたい。
勿論専門の看護師さんが付き添っている。
逆さにされてしばらくすると頭に血が昇って顔がカーと熱くなった。
2~3分すると一旦元に戻してくれる、そしてもう一度逆さ吊を、これを 3回から4回繰り返すのである。
こんな治療方法は初めて聞いたのであるが逆さに吊り下げることに より背骨と背骨の間を広げて圧迫されている神経を開放するとの ことである。
これは慣れて来ると殆ど頭に血が上らなくなるのが不思議である。
実は3年位前、この「危機2」で書いたように私は腰にかなりのコンプレックス を持っていて、これは何かしなければならないと思いネットでなんと 自分で出来る 逆さぶら下がり健康器具 と言うのを買った。
私が買ったのは中国製の物で上のものより若干安かった気がする。
これは部屋の中に置くと場所を食って邪魔なのであるが、逆さ生活も 結構乙なもので、逆さになってテレビなど観たりしてたのである。
ところが背骨が正常であると言われて逆さで暮らす目的が急に消滅して、 わずか2か月位でお蔵入りとあいなった。
まだ持っているから誰かやってみたい人居るかな....
さてさて腰痛対策には腹筋を鍛えるのが最も効果的である。
医者もそう言うが、しかし腰の痛い人がどのようにして腹筋を鍛えられるのか。
腰が痛くない人でも腹筋を鍛えるのはなかなか厄介である。
実は私の体は筋肉と言うものは少ない方なのだが、腹筋だけは 自信がある、ある方法で鍛えたのだがこれは気が向いたら 後日書く。
話がそれたが、第二の拷問は「針の山」で有った。
これは筋肉に弱い麻酔注射をするもので一種のブロック注射の 様なもので細い注射針を使って腰や足の痛い部分に何回も 少しづつ注射をするものである。
かなり細い注射針を使うのか全く痛みは感じないが、ぶすぶすと 何回も刺すので見ていると怖い、しかもそれほど 効果があるとは思えなかった。
最後の拷問は「引っ張りの刑」であった。
これは先ずベットに寝て上半身を固定する。
次に腰の部分にベルトをかけてそのベルトに綱をつけて 足の方にある滑車に通しその先に錘(おもり)を付けて引張る ものでかなりの重量の錘を付ける為に相当な苦痛を伴い 軽い全身麻酔を受けてうつらうつらした状態で行われるのである。
この治療方法も逆さ吊と同じく腰を引っ張ることにより背骨と背骨の 間を広げ神経の圧迫を抑えるものであった。
この石田先生とは彼の趣味が私の仕事と関係していて、 治療の合間に色々な話をしたがこと腰の治療に関しては効果があるとは 思えなかった。
3~4回上の治療を受けたけれど一向に効果が上がらないばかりか 腰の痛みは前にも増して酷くなって来たのである。
つづく...