危機14

「実は私もそこの病院で半年前にヘルニアの手術をしたんだよ」
石田先生はそう言ったのである。
「ええ!先生ヘルニアの手術をされたんですか」私は驚いて 聞き返した。
「そうだよ」先生は笑って答えた。
いったいこれ以上患者に対する説得力の有る言葉が有るのだろうか。
リスクの全て知っている医師が自らその道を選んで、同じ病院同じ方法を 私に勧めているのである。
もう私の頭の中は手術の方向に動き出していた。
「先生、輸血は必要でしょうか?」私は訊ねた。
ちょうどその頃輸血した血液でC型肝炎に感染して苦しんでいる 人の報道が有った。
「この手術に輸血は必要ないんだよ」先生は答える。
「傷口は化膿なんかするんでしょうか?」私は訊ねる。
「ヘルニアの手術は背中から行ううんだが、背中は化膿しにくいんだよ」先生は答える。
「入院は何日位必要なんですか?」再び私が訊ねる。
「普通は2週間だな」先生。
「仕事はどの位から始められるようになりますか?」私。
「私は3週間で職場復帰したよ」先生。
「今までのように動けるようになりますかね」私。
「私は今年の冬スキーに行こうと思ってるんだが、私が うまく滑れたら君も多分大丈夫だよ」私の矢継ぎ早の質問に 先生は最後はユーモアで答えた。
私にはどうも妙な癖がある、もしかすると人生の中で最大の決断の瞬間に 居るかも知れない時にまるで子猫を貰うように、いとも簡単に結論を出してしまう癖だ。
いくら迷っても結論が出ないことを直感的に悟っているのかも知れない。
私は女房にも相談せずに手術をすることに決めてしまった。
3日後に。
私の判断は正しかったのか。
つづく。。。