危機16、一応最終回

そんな時石田先生がひょっこり現れた。
石田先生は手術の時は立ち会われたが、その後自分のクリニックに帰って いたのだ。
クリニックが閉まって私の様子を見に来たのだ。
「おしっこが出ないんだって、変だな」先生は言った。
「そうなんです」私は答える。
「なぜだろうな?」先生は言う。
「先生、歩いてトイレに行っても良いですか?」私は思い切って訊ねた。
「ん...」先生はしばらく考えていた。
そして「いいでしょう、つまずかないように気をつけなさい」と言った。
私はゆっくり起きあがって、慎重にベットから降りると、そろりそろりと 歩きながらトイレに向かった。
手術から半日、私は自分の足で立ち上がって歩いた。
「グリーンマイル」と言う映画があった、主人公の刑務所の看守が膀胱炎に なって排尿時の苦痛に耐えかねている、そしてそれが治癒してトイレで 放尿するシーンがあった、気持良さそうに。
1999年のアカデミー賞作品である、主人公はトム・ハンクスが好演している。
あの映画のこのシーンを見て私はこの時のことを思い出していた。
それはまさに爽快な気分で有った、いままで立ち込めていた暗雲が 一度に吹き飛んだように。
やがてトイレからそろりそろりと帰ってきた私を見て、石田先生は 笑いながら言った。
「そう言えば君はヘルニアになってからベットでずっと寝ていること 無かったんだな、寝ておしっこをする練習をするように言えばよかった」と。
何事にも練習は必要である。
長い間読んで頂きましてありがとうございました。
本当はこの後退院、帰国まで書く予定でしたが。
とりあえずここで終了とさせていただきます。
最終的に私は2週間で退院して、3週間目からまた出張に出かけました。
ドイツの病院の様子等はゆっくり番外編で書きたいと思います。