やめたい君

どうしたんですかと聞くとB君のことだと言う。
AさんによるとB君は1年に一回位病気が出るのだそうだ。
そのB君の病気とは「やめたい病」である。
B君は何か会社に特定の不満があるわけでは無いのに会社を 辞めたいと言ってくるのだ。
Aさんは「もう既に新しく勤める会社が決まっているならしょうがないが、 決まっていないならせめて次の会社が決まるまで、うちの会社に いたらどうか」といって慰留したと言うのである。
過去にも何回かこんなことがあったとAさんは嘆(なげ)く。
私はその話を聞きながらAさんの顔を見ていた。
Aさんはとても厳しいところがあって、誰かが辞めたい と言ってくれば「おお、辞めたら良いんじゃないか」と 言うような人である。
ところがどうしたことかB君に関してはとても優しいのだ。
B君はわが社に入って5年位、特に優れた能力があるとも 思われないし、彼が辞めても当面困ったことなど起こらない。
なぜだろうなと思いながら私はもう一度Aさんの顔を見た。
結局次の年にB君は会社を辞めていった。