本だけ持って

ツバメ君夫妻にはほとほと困ってしまった。

なんとドアの上のロック用の金具に止まって夜寝ている。
ここはドアの開閉の度に動く場所で、ここに止まられると安心して ドアの開閉も出来ない。



うっかりドアを開けて足でも挟んだら保障問題になるしね。
危ないからと追っ払っても直ぐに帰ってきて同じところに再び止まる。

しかももう一匹は何と私がツバメが入れないようにビニールを垂らすために 張った細い針金の上に止まっている。
そしてこれが又大変な場所で、ただ止まっているだけでゆらゆら揺れて、 とても不安定なのだ。

多分この針金に止まってる方が雄だろうと思うと、気の毒で見ていられない。

仕方なく私は夜中に板を探して上の柱に打ち付け、彼らが止まれる 場所を作ってやった。
もしここで良ければちゃんとした見栄えの良い棲家を作ってやる つもりだったのである。

ところが次の朝起きて見ると、なんと打ち付けた板の上に既に藁なんかを 運んで巣作りをしているではないか。
これには参りましたね、夜中に打ち付けた板はその辺に転がっていた 物でとても見栄えが悪いのだ。
かといって今から外したんでは、せっかく気に入っているのにまたヘソを 曲げるかも知れない。



しょうが無いので今年はこのまま行くことにした。

近々正式な賃貸契約書を作成して調印と相成る。
ツバメの場合はハンコの代わりに足跡になるな。

こちらの条件は時々巣の中を覗かせてもらう事だ、これは 多分あまり嫌がらないと思う。
なんせドアの金具に止まっている時は、ガラス越しだが目の前３０ｃｍ位の
所に止まっていても逃げないのだから。

今年の夏はすぐそばのツバメの雛を見ながら朝食を食べてたり 本を読んだりすることになる。

まあいっか。